手紙


 拝啓

 お元気ですか?
 あなたが家を出て行ってから、早いもので5年にもなります。
 あて先のない この手紙を私は風に飛ばすだけ。
 もし、あなたが偶然、この手紙を拾ったなら私を思い出してください。
 一緒に歩いた桜並木、目を瞑れば、どこからか懐かしい香りが漂ってきそうです。
 甘い春に恋しあったのをあなたは忘れてしまったのかもしれない。
 5年目の春を迎えた私は、とても複雑な気持ちです。
 あなたが最後に言った言葉をいつまでも胸に秘めています。
 忘れません。
 だから、私はずっと待ちつづけるのです、あなたを。
 それでも、あなたが行くというのなら、私は止めません。
 私はあなたの為に、何か役にたてるのなら、それでいいのですから。
 たとえ、あなたに新たな女性が出来たとしても、私は幸せに思います。
 本当は、帰ってきてほしいのですが・・・・・・。
 私は、

 ・・・・・・なんでもありません。

  どうかお元気で。
                                        敬具



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